ものづくり

ものづくりへの想いをヒトやモノとの出逢いを通し綴る連載「ものづくり探訪」第2回目。

先日、デザイナー北村の同行で、ニットの製造会社さんを訪ねてきました。今までニットといえば、普通に機械で編まれているんだろうとしか考えていなかった私。今回の出張で、こんなに一枚一枚に職人さんの手が入り、手間がかかって出来ているんだと、驚きました。当たり前のようで当たり前でない、ものづくりの大変さ、そして面白さを初めて知った旅でした。

 

まるでお洋服の3Dプリンター

 

ウィーン、カシャーンと動く、何台もの大きな横長の機械。どの機械も、頭にはたくさん大きな糸巻きをつけて、細いワイヤーが所々つきだして、何か不思議な生き物のよう。中ではなにやら部品が右へ左へ行ったり来たり。そして下からはすでに筒状に編みあがった状態の服が…!

徳島県の小高い山々が連なる田園風景の中に立つニット製造会社の工場。優しい笑顔の社長さんが、ニットのお洋服が作られていく工程をひとつひとつ見せて下さいました。ニットはおろか、アパレルの工場自体が初めての私が、大きな機械たちを前にぽかーんとする隣で、「すごーい!」と目を輝かせる北村。

これが「ホールガーメント」という機械だそうです。普通は、腕を作って、胴体を作って、ポケットを作って、縫い合わせて、とするところ、これが全部できあがった状態で機械から出てくる。まるでお洋服の3Dプリンターのようです。お洋服に縫い目ができないので、デザインがきれいで、ニット本来の軽やかさや手触りが楽しめます。

オーガニックコットンにとことんこだわったニットのお洋服をつくるため、こうした技術をもつ国内の工場をずっと探し求めてきたNADELL。縁あって、今回訪問の会社さんに出逢いました。

 

ニットに生命が吹き込まれるまで

 

私たちがこの会社さんで感動したのは、機械の多さだけではありません。
機械が編んでいるといっても、やっぱりそれを動かしているのは人。立体的で複雑なデザインを機械にさせるために、熟練の方がコンピュータを使って細かく設定します。カラフルな点がびっしり並んだ画面で、「コレが、服のあの部分で…」と説明して下さるも、複雑すぎて理解できず…。

ほかにも、スチームをあてる人、裁断する人、仕上げの縫製をする人、検品や梱包をする人。それぞれの工程で、最終的にはすべて人の手や人の目が入ります。手間がかかっても、きちんと届けたいという想いが込められて、服になっていくんだと感じました。

ものづくり

スチームの機械で魔法のように一瞬のうちに伸ばされるニットたち

編みあがったニットのお洋服は、ふっくらと安定した編地になるよう、スチームをかけられていきます。テキパキとした従業員さんたちが服を型にはめて、シューっと熱い蒸気をあてると、お洋服が魔法のように一瞬でふんわりと伸びます。それはまるで、縮こまった生地に息が吹き込まれたよう。

ちょうど見学させて頂いていたときに作っていたのは、地域の学生さんたちのユニフォーム。「サイズが狂うといけないからね。」と一枚一枚、丁寧に仕上げられていきます。

ものづくり

位置がずれないように…息が止まるようなカッティング作業風景

ものづくり

特殊なミシンを使って仕上げの縫いが施されていきます

みなさんの眼差しは真剣で、手の動きも的確。目を輝かせて工程内容を説明して下さる従業員さんもいらっしゃり、ものづくりに対する姿勢に心を打たれました。誇らしげな笑顔でどんどん作業場を見せてくれる社長さんに、「社長、ニット好きでしょ」と北村が声をかけると、社長さんはまたニコニコ。

色々な事を教えて頂き、背筋の伸びる想いで、帰路についた私たちでした。

ものづくり

この町の長老のおじいさんのように祀られていた大木

最後に、この地域で有名な樹齢1000年の巨大なクスノキを見せて頂きました。社長さんも時々ここへ来るそう。なんだか大きなパワーをもらった気がします。

 

NADELLが国産にこだわる理由

近年日本では、繊維工場がとても厳しい状況におかれています。繊維産業で栄えていた頃の日本には、糸づくりから縫製まで、服づくりに携わる職人さんがたくさんいて、優れた技術をもつ工場もあちこちにありました。それが次第に国際的な価格競争が激化し、日本の多くの工場が廃業に追い込まれています。繊維の主な産地では高齢化も進んで、後継者となる若い労働者も不足しているようです。

この状況が続けば、もう日本で服は作れなくなってしまう、とNADELLは真剣に危惧しています。だからこそ、私たちはこれからも優れた技術をもった工場さんたちと継続的なお付き合いをし、国産のお洋服づくりにこだわっていきます。

心をこめて生命をふきこまれたニットたち。
NADELLが自信をもっておすすめするアイテムは、今年の秋冬に順次登場予定です。
みなさま、ぜひお楽しみに。